JAFICA 一社)日本フリーランスインテリアコーディネーター協会 の総会翌日に、インテリアショールームをめぐる『〇〇散歩』が今年も開催された。昨年の様子はこちらからどうぞ。
⇒上質なインテリアに触れる”散歩”
今回の『青山散歩』では、イタリアを象徴するモダン家具ブランド、 ミノッティのショールーム・Minotti AOYAMAを訪ねた。
奇しくもこの日は、神戸ショールーム・Minotti KOBEのオープン日で、ほとんどのスタッフの方が神戸のレセプションに行かれたとのこと。神戸から真逆のタイミングでやってきた自分がちょっと可笑しかった。
匂いは記憶と密接な関わりを持っているらしい。大脳新皮質を経由せず脳へダイレクトに送られるため、他の五感より感情や本能、記憶に働きかける力が強いのだそうだ。
昨今の展示会では、大空間用のアロマディフューザーを見かけるようになったし、現によい香りを漂わせる商業空間は格段に増えている。
ここMinotti AOYAMAは、重厚な扉を開けた瞬間、外界と隔離された別世界が広がる。独特な清々しさを持つ濃厚な香りが、静かにそれを教えているのだ。香りに触発されて、この空間を五感で味わうスイッチが入る。香りの演出効果、すごいですね。
ミノッティが神戸に来るらしいと噂を聞いたとき、神戸!?と素っ頓狂な声を上げたのはわたしだけではなくて。わたしたちの頭には、関西=大阪、という不動の図式がある。なんで神戸?人来んの?売れんの?と、友人知人のインテリアコーディネーターさんたちは声をそろえて不思議がっていた。
「大阪じゃなかったんです。(出すとしたら)御堂筋でしょう、ビルの中になりますし。イメージ的にも違う、と。」
あ、何も言ってないのに、あちらから神戸出店の経緯を説明してくれた。エスパー?
ちなみに以前、関東のインテリアコーディネーターさんに、御堂筋は東京でいう青山のようなところか、と聞かれたことがある。大阪のインテリアコーディネーターさんに確認したところ、おそらくそうだ、とのこと。この手の質問、悲しいかな神戸の人間は、ほぼ取り次ぎ役で終わる。
話をもどそう。
スタッフさんがほとんど出払っているということで、貸し切りでご案内いただいているわたしたち。わがリビングかのようなくつろぎっぷりだが、主だった納品先は?マーチンデール(生地の摩擦に対する摩耗耐久性を評価する試験)の数値は?などの、ちゃんと専門的な質疑応答が繰り広げられているシーンなので、安心してほしい。
ちなみに、主な納品先は東京都港区、オーナーは8割方が経営者とのことだ。
冒頭の画像の中で、ベッドの足元に敷かれているラグがこちら。靴の半分が埋まるほどたっぷりとした毛足のリアルファー(羊毛)だ。この時代にリアルってどう、と思われるかもしれないが、毛皮採取を目的に羊の命を奪うことはしていないのでOKとのこと。そう聞くと安心してリアルの質感を楽しめる。静電気が起こらず、水や汚れをはじいてくれるのも、リアルならではだ。
たまらず触ってみた感覚は、ザ・動物。手触りだけなら、ラグよりペットに近い。なんだか、うちのラブラドールを思い出した。
価格は、1㎡あたり30万円台。来年にはググっと値上げが予定されているそうなので、お好みの方には早めの購入をお勧めしたい。
ハイエンド家具を買おうという人は、ソファやテーブルといったプロダクトではなく、感性に共鳴するその世界観を求める。だからわたしたちはその世界観を、体感として知っている必要があり、体感として知るには、その世界のエネルギーをダイレクトに感じること以外にない。
本来の世界観が大宇宙だとしたら、ショールームは凝縮された小宇宙だ。小宇宙トリップはただ眺めていてはダメで、何を見て何を知り、何を感じるのか、その目的を明確にしておくことが肝心。・・・なんでもそうですね。
最後に、全員ミノッティの紙袋を見せて撮る、というベタなことをやってみた。表情にそのたくらみがみごと現れていて笑えた。
Minotti KOBEの方も、また機会を改めてご紹介したい。